15夜通信 / 乗り越えられない過去はない

amazon
竹野内 豊 主演
羽田 美智子 市川 実日子 秋山 菜津子
山寺 宏一 西村 雅彦

「サイコドクター」
2002.10.9-12.18 NTV 全11話 カラー / 4:3
by G-Tools

15屋では曼珠沙華が盛り.
最近の読めない天候に,露草がまた花をつけたり,虫の猛威が復活したりと
相変わらずのところだが,ようやく味覚の季節を感じ,箸をでなく筆をとったものです.

このドラマをご存知の方… ,渋い.
小生のまわりには 「ひとりも」 いません… .


O.A当時,あまりの素晴らしさから内緒で見ようねと特にまわりに吹聴もせず,密かに見ていたものです. (^^;
何が素晴らしいのかというと,その作品全体の世界観です. 原作の漫画も読みました.
映像化に向けたその個々の解釈は,思わず唸るところもあり,深く,優しいアプローチに感動します.

第1話 柴咲コウ,内藤剛志 / 第2話 井川遥,中村俊介
第3話 鈴木杏 / 第4話 工藤夕貴,香川照之
第5話 大谷直子,森山未来,國村準 / 第6話 石橋凌,南果歩
第7話 桜井幸子,恵俊彰 / 第8話 唐沢寿明,小雪
第9話 大塚寧々,泉谷しげる / 第10-11話 渡辺美佐子,いかりや長介

毎回,様々な役者さんがその世界に迷い込んできては離れていくその人間を捉える眼差しと距離感が素敵です.
また各話だけでなく,もう一本の太い縦糸が全話を通して描かれており,その着地の仕方と主演の竹野内さんと
演出の水田さんの芝居の解釈には感動しました. 本当に素晴らしいの一言に尽きます.

その目線で,「竹野内豊」という役者を見つめなおすと,後に「人間の証明」で主演された時,序盤の話で
バーのカウンターに座って一人ハンバーガーを頬張る後姿に,「棟居」 という人物像を集約してしまうその解釈に,
日本にもこうしたロシア演劇的な芝居のアプローチを「自然に」される役者がいたのだと,思わず唸りました.

最近のドラマや映画を語ろうとうすると,その個々の役者のお話になるケースがよく見られます.
それが,例えばニキータ・ミハルコフ監督の「太陽に灼かれて」やエミール・クストリッツァ監督の作品となると,
さてどう話していいのやらとにかく見てみてと,その良さが作品の中で一体となっているので,どこか一つを
抜き出してどうのという問題ではないことに気づきます.
この差は大きい.

翻って,この「サイコドクター」が前者なのか,後者なのかのハッキリとした区別が,小生にはつきません.
ただ,個々の役者さんの芝居が他の機会に拝見した印象と,この作品の中で出会った印象が違うことだけは感じます.
素晴らしいです. もちろん,レギュラーの役者さんたちの面白い芝居を個々に抜き出して楽しむこともできますが,
ここでは敢えてそれをしないでおこうと思います. 演出も役者も撮影も音楽も,すべてはその物語の世界に生きる
架空の人物たちへのほどよい距離感のもとに存在し,またそれを阻害するものであっては決してならないのだと,
改めて思います.

「乗り越えられない過去はない」

この楷先生の言葉に,今までずいぶんと助けられました.
それはそのセリフが,「文字」からでなく「作品」から醸された言葉になっているからでしょうね.
3話,6話,そして11話… ,小生は毎回見ると必ず泣いてしまいます. (^^;

この2日ほど東村山も急に冷え込んで,おいおいそんなに急ぐなよと,食いしん坊の15屋風情は「秋味」の計画中の折,
少し焦り気味. いきなり「鍋」には行きたくないと「七輪」を据えて,空を拝みます.
しっとりとしたこの季節に,ちょっと秋味なこの「サイコドクター」はいい肴になると思いますよ.

ただかなり希少な肴なので,よくお探しを… . (^^

Submit a Comment