InterBEE 2011 に思ふ
かつて,スタンリー・キューブリック監督が,”Barry Lyndon” で時代の空気感をリアルに再現するために,
もともと別の目的のために他業界で開発されたロウソクの炎のみを光源に撮影可能なレンズを探してきて
映画に使用したという有名なエピソードを反芻します.
そのシークエンス,絵を構築する上で,必要な道具,技術の割り出しを進めて,まずそういう機材の有無を確認し,
無ければ代用に値するものがあるのか,そして双方無ければ開発するのか,それともシーンとして諦めるのかという,
演出と撮影部さんや照明部さんとの,シナリオと絵のイメージを前提にした話し合いがあり,その上で
あとはプロデューサーサイドとの具体的な相談になるというのが私の考えるイメージなのですが,
そういう意味で何か新しい発見や,「それだ!」的な技術は,今回のメッセには少なかったように思います.
本来,目の肥えた(はずの)プロが見に行く専門見本市に,その人間たちを唸らせるような,
思わず体を乗り出すようなデモ映像やプレゼンに,今回はなかなか出会うことができず,何か機材有りきな,
そして絵が見えてこないものだったような気がしています.
心にしみるストーリーと,ドキドキワクワクするような映像を考えていく,そのイマジネーションの駆使を
試されているのだ感じました. 私がヘボければ,そういう機材しか寄って来ないのだと.
精進します! (^^
The Sketchtravel
モノ作りとはこういうことなのだと,背筋を伸ばし,そして感動しました.
堤さん,尊敬します.
SR3

ダーレン・アロノフスキー監督 “BLACK SWAN”(2010 USA) の撮影は,なんと 16m/m.
そのメイン機材として,このARRIFLEX 16SR3 が使用されたとのこと. レンズは Zeiss Ultra 16.
他にも,同じく16m/m機材の416 や 5D,7Dもリストに載っているが,いずれにせよそれらのチョイスが,
決して価格ではなく,作品の世界観,撮影のネライ,シークエンスの特長が起点になっていることは明白.
日本だと,nac で同じ組み合わせができそうですね.アスペクトはシネマスコープ.
フィルムはFUJI ETERNA Vivid 160T と 500T で,ラボは Technicolor と DeLuxe をまたぐ.
手持ちのショットが多いにもかかわらず,作品としての重厚さと役者の芝居を的確につかむ
その丁寧な撮影設計には,16m/mということを全く感じさせません.
当たり前のことがきちんとなされるということが,如何に大切かを改めて感じます.
撮影に関しては,同じくネライで16m/m撮影が行われた内田吐夢監督の”飢餓海峡”を,
芝居に関しては,イザベル・アジャーニの”カミーユ・クローデル”を彷彿させる,実に素晴らしい映画でした.
