ポン・ジュノ監督 2006
原題 「怪物 / THE HOST」
邦題 「グエムル -漢江の怪物-」
2006.9.2 日本公開 120min カラー / Aビスタ
いよいよ明日,DVDの発売日.
おそらく買うであろう小生.
コレクターズ・エディションか… 何でそういうものを… .
ポン・ジュノ監督は次回に何を撮るのでしょう?
今から非常に楽しみです… もちろん例によって軽い嫉妬とともに.
今までも何回となく書いてきましたが,久しぶりに若い世代できちんと演出する監督に出会った気がします.
演出とは,フレームを決めることでも,編集を巧くすることでもありません.
演出とは,シナリオに書かれたことを理解し,解釈し,それを形にすることです.
例えば,「七人の侍」という黒澤監督の映画がありますね.
あの七人,それぞれ生まれも性格も違いますが,三船さん演じる菊千代以外は全て武士です. だから菊千代の殺陣だけ,
他と違う振りかぶるような刀の扱いで,汚い太刀すじになっています. あれは三船さんのオーバーアクションではなく,
演出なのです.
また「木枯らし紋次郎」のような渡世人,これも武士ではありません. だから当然,高価なよく切れる刀など
持っているはずがありませんし,腱だけ断つような腕もないから武士と同じ扱いをしたらすぐ刀こぼれしてしまうでしょう.
だから骨に当たらぬよう,剣をまっすぐに突き刺す感じで殺陣をつけます. もちろん市川監督の演出です.
いかに物知りな黒澤監督や市川監督でも,農民あがりの武士や股旅を
目の前に見たことがあるはずがありません.想像の産物ですね.
しかし,それに耐えうる知識と勉強から,その人物の行動や志向性を探り,
動きの線の必然性を立証します… .
これが 「解釈」 です.
つまり剣を振るうのも,あるいはコップの水を飲むのにも,そこには何らかの
理由や原因があり,その如何によって当然,行動の仕方は無数に可能性が
ありますが,それはその人物の志向性によって所作や仕草は限定されてくる… . その最中に,セリフを口に出せば,
それが棒読みであっても,解釈によって得た体の動きによって自然に抑揚がつく.
「殺人の追憶」と「グエムル」の両方に出ているソン・ガンホさんやパク・ヘイルさん . 二人とも役柄がガラリと違いますが,
体の線の使い方やセリフを言う口の動きまで全く変えてきていることに感動しますよ.
いい役者さんだなぁと思います. そして演出とは大変な仕事だと,改めて感じます.
本作品が,前作「殺人の追憶」と比較して残念だったと思うのは,この監督の特長が
鳴りを潜めたところでしょうか.
その特長とは,長玉の使い方とフレームイン・フレームアウトです.
「殺人の追憶」も,そのまた前作になる「ほえる犬は噛まない」もファーストカットの長玉=望遠レンズ
の使い方は絶妙! とても印象に残る絵に仕上ていますね.
また,カメラはゆっくり動かして,フレームの中の役者は切れよく動かし,フレームに入ってきたり,
外したりということで動きを作るのも上手です.
「殺人の追憶」の採石場への追っかけ等を見ていただければ,なるほどと思うはずです.
つまり映画監督は,シナリオを解釈して,芝居をつけたものをフレームに収めなければなりません.
ここでもやはり,手法の選択には必然性があるはずであり,そのセンスこそが,映画監督という仕事独特のものだと言えるでしょう.
ポン・ジュノ監督が,作品に込めた想いや史観に誠実さを覚え,またまだ途上にいるという謙虚さを
氏の演出に感じることに軽く慄きつつ,やはり日本の映画人たちもそろそろ正月ボケから覚めるためにも,
このDVDを鑑賞することを強く勧めます.
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まぁ,お茶うけにどうぞということで.
DVD欲しいですね~。
先日、会社の飲み会で散財しちゃって先立つものが・・・。特典映像見たいなぁ~。
C.BOX 入手です.(汗)
ゆっくり見ようと思います!
同じく、先立つものが・・・。
特典映像凄く充実しているみたいですね(涙)
先立つもの…小生もないです.(笑)
こういう時に夫婦が同業者である強みでしょうか.(涙)
まだ見ていませんが,絵コンテは嬉しいです.