15夜通信 / ヒッチの血統書


M・ナイト・シャマラン監督 新作

原題「LADY IN THE WATER」
邦題「レディ・イン・ザ・ウォーター」
2006 秋 日本公開 / 総尺未定

この監督の映画ほど,極端に賛否分かれるのは珍しい.


見る人によって全く感想が全然違う!
前評判で見に行くかを決めようとすると余計に迷ってしまいそう.

これは見る側のセンスに対する依存度が高いことを証明しています.
つまり,委ねる部分が非常に広く,またそれを意識していると小生は感じます.

非常に柔らな風貌をお持ちの監督ですが,作りに関してはかなりのストロングスタイル!
それは作品による撮影部の違いでもわかります.

多くの監督は現場の意思疎通簡略化のため,気心の知れた撮影部と組みたがるもの.
監督のルックの好みを理解してもらえる人との現場は楽しい. それに,とにかく楽! シカーシ,彼は違います.

作品の世界観により撮影部を変えてきているように推察します.

「シックス・センス」や「サイン」は東洋的なものの考えをタク・フジモト.
「ヴィレッジ」のようなラブストーリーには情感のロジャー・ディーキンス.
そして本新作はクリストファー・ドイルと….

ここに監督の映画制作に対する哲学があるかな!
全てを自分の想いでコントロールするのではなく,映画自身が行きたい方角へ後押しできる万全な体制を整え,
自分は映画の奴隷としてあくまで門番,いや作品の世界観の守護神として君臨すること….
そのように考えているのではと推察します. そして,この考えに小生はヒジョーニ共感するのです.
かつてで言えば,キューブリックやヒッチコックがこの手合いの代表だと思いますが,シャマラン監督の場合,
手法がホラー・サスペンスを選択しているから,やはりヒッチコックの後継に位置するでしょう.

だから勘違いしてしまうのでは…,勘違いというのは,日本の配給が流す宣伝のことです!!

シャマラン監督がヒッチコックの血筋であることは間違いないでしょうが,それはあくまで手法の話であって,
作品の描く世界観は全く違います.
彼の作品は,サスペンスの衣を着ていますが,中身は非常に思想的でロマンチックで,家族や人に対する眼差しが熱く,
あくまで艶のある人生を描いているのです. そういう意味で演出というものに力点を置いていますから,
おそらく役者はやりがいを感じるだろうし,力量も要求されます.

広告する側から言えば,サスペンス・タッチで観客を呼ぶ方が動員できるという計算があるかもしれません.
けれどそれにより生じた観客の誤解も相当あるはず. 事実,ネットで見ることのできる彼の作品の感想で,
否定的なものの多くはそこが原因のようですね. 求む側と作る側のギャップを生む広告だもの.

シカーシ,それもシャマラン監督にとってはよしとしている気がするな.
何故なら彼の選択が,あくまでホラー・サスペンスというエンターテイメント性の高い手法だから.
とにかく多くの人に見てもらいたい…,デートで見にきて欲しい…,映画は人が見ることにより完成する…,
この若さで恐ろしい成熟度.
嗚呼,愛情を持ってこう叫びたい.

コノクエナイヤツメ! コンドモタノシミダゾ !!

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