15夜通信 / フィルムで撮る


第28回ぴあフィルムフェスティバル映画祭

東京他,8ヶ所
「PFFスペシャル」 7.29 – 8.4
渋谷ユーロスペース

今年のPFF入賞作品は,創設以来初めて,すべてV作品だそうです.
このことをどう捉えるべきか… ,小生も考えています.


民生の機材が高品質になり,またDTV等,ポストプロも随分と環境が変わりました.

小生の仕事でも,編集というとほぼ100%がフルデジタルによるノンリニアですし,その昔に編集卓と呼ばれていた
編集室の機材も見た目に簡素化され,仰々しい装いでなく,デスクトップPCが2台にマスモニが1台,
お客様確認用の民生の大型テレビが1台で,デッキ関係はサーバーといっしょにマシンルームに一括して置かれているので
大きな機材はほとんどないという様相です.
MA も同じく,音をモニター上で目で見ながら切り貼っていく作業で6m/mをデルマで印をつけ,切っては首にかけつつ繋いでいく,
かつての職人的光景は皆無になりました.

小生は決して懐古趣味の男ではありませんが,映像の末端で仕事をしていると,ふとこの事態を楽観視していいものかと
思う瞬間が多々あります.

まず映像を仕事としていない人々もPC上のコピー&ペーストという作業を日常的にしているため,シナリオやその他決め事が
訂正可能なものという安易な発想が横行しています. それに色なども補正やエンコード等が一般化しているため,
一部ハイエンド以外では撮影現場でそれほどの精度を問われなくなりました.
またハードの面で,民生レベルのHDキャメラやMACによる編集能力が高度化し,手軽に体裁のよい映像作品の完成が可能です.
さて,そうするとプロフェッショナルとそれ以外の違いはどこにあるのでしょう?

小生が考えるに,それは「撮影」にどれほどの力点を置くかの意識だと思います.
その精度とそれを可能にする準備!

小生の表現が稚拙で,あまりピンとこないかもしれませんね… .
撮影は,若い撮影部さんほどアングルを決める前にキャメラを据えてしまう人が多いです.
これは昔,キャメラが重くて,大人2,3人でないと運べなかった時代にはありえないこと.ですから,ベテランのフィルム上がりの
撮影部ほど,きちんとアングルを目視で決めてからでないと三脚を据えません.
だって現場で,何度も三脚ごとズリズリとキャメラ位置を移動するなんて何かカッコ悪いでしょ.
最近のレンズやキャメラは明るく映るので,照明部の重要性が薄れた時代が続いています.
しかし,ライト・マジックと言われますが,きちんと当てた絵は誰が見ても一目瞭然に艶が違います.また,最近増えてきた
HDも照明の重要性の復権に一役買わなければオカシイ. HDは本当に明るくキレイに映ってしまうので,もっと照明が少なくてすむと誤解している人が多いのですが,( 実は同業者にもいる… ) これは不勉強です.
フォーカスの精度が厳しい分,逆にFを稼がなければならないので,照明は増えるはずなんです.
この発想はフィルムの仕事に近い考えです.

編集は,ノンリニアになって,最初に頭から順番にOK抜きをし,それをシナリオ通りに並べかえて,最後につなぎ部分を
微調整していくというフィルム編集と変わらない工程に戻りました. しかしその分,体感として何コマという「時間」の
生理的なセンスが,より強く求められると思います.
音の作業も,昔の6m/m時代からの人の方が作業があきらかに速い!
何故なら,昔の経験から現場で大変にならないようにきちんと仕込んでくるからです.後処理で何とかしようという発想が
始めからないんですね.

PFFのV作品でも,いいものはあると思います. きっと力量のある作品がどんどん出てくるでしょう.
シナリオの重要性が常に叫ばれますが,それは言わずもがなとして,これからは「きちんと撮る」ことをもう一度
考えてみたいと思うのです.

AFを振り回すのではなく,2眼レフをきちんと構えて撮るように… .
丁寧に構えて撮るには,演出,撮影,芝居の力量がそろっていないとゴマカシが効きませんから,ちょっと怖いですね.
しかしそこが,映画なのか,ホームムービーの延長なのかの境界線かもしれません.

それを自分に課すためにも,若い人やこれから始める人たちは考えてほしい.
「映画」と名のつくものを考える時,尺を半分にしても,あるいは予算の都合上,半分しかできなくても撮影はフィルムで
検討してみてください. そして,カットでも繋がる撮影を目指しましょう.

散漫に完成するより,できるところまでをきちんと仕上げることが,長い目で見ると世界と渡りあうことにつながる気がします.

Comments

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    リンクさせていただきました。ご確認ください。

  2. 相互リンク ブログ・サイト様

    姉妹ブログのほうも、リンクさせていただきました。ご確認ください。

  3. モカ次郎 says:

    こんばんは。度々ご丁寧なコメントありがとうございます。
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