15夜通信 / 解釈が辻

琵琶湖の湖北を「心の故郷」と自称する家人の影響で,今の NHK大河を少し前から見始めました.
長らく池波派の小生と司馬派の妻は対立を余儀なくされ,長期戦を覚悟しておりましたが,
最近になり妻が,市川崑監督の金田一耕助作品(小生は割りを覚えるほど見ている… )に理解を示したのを機に,
小生も自ら歩み寄りをした次第.


しかし,これが意外に面白い.

そして昔より薦められていた原作も読み始めました. 家人が言うには,1番面白い時期の話に見始めたのが良いとのこと.
しかしそれにも増して,夫婦一致の感想が 「舘ひろしさんの信長が良い!」 であります.

これは本当に良かったです. おそらく舘さんの人と柄の中に,織田信長という人物と共通する何かがあったのではないでしょうか.

役者の演じる架空の人物が本当にその時間を生きようとする時,訓練された技術や手法の裏打ちだけでなく,
ある種の魔法がかかる時があります. それが起きたのかな? ましてや信長は実在の人ですから,「入った」感じです.

「うつけ」と言う言葉を辞書でひくと以下の通り.

中が空っぽの意.ぼんやりしていること.
まぬけの意味でも使われる.

今まで数々の役者さんの演じる信長の多くは,この「うつけ」を「昼行灯」と解釈して,暴力的で粗野な隠れ蓑を着た
有能な武将というコントラストを描いています. ただ,それだけになってしまっている気がして,それはそれで型通りという感じ….

舘さんの信長は,これに気品と華やかさが加わりました.
もちろん即物的なお話ではありません. おそらく美意識が似たもの同士だったのかな.
「新・居酒屋ゆうれい」という作品の中の舘さんが,煙草を吸うシーンがあるのですが,その姿に小生が覚えた違和感は
この美意識が原因かも….何故かといえば,あれは場末の居酒屋の親父が吸う煙草の吸い方ではありません.
もしあの役に,それを得心できる過去が設定されていれば可ですが….
舘さんのそうしたところが信長にはピッタリとシンクロしたのでしょう.

僭越ながら小生が考えますと,品格というのは身分や所得の高低ではなく,ある美意識を持って生きてこそ漂うものであり,
これはスタニラフスキーとは関係ありません. 舘さんには,おそらくそうしたものがあるのだと思います.
いやぁ全く,大ファンになってしましました!

芝居はセリフの抑揚ではなく,呼吸のリズムと体の動線の使い方の解釈なのかなという小生の解釈… .
まぁ,それこそいろいろな解釈があるとは思いますが,一人として同じ人間がいないわけですから,
そこを謙虚に,オンリーワンという気持ちで解釈するのが,職業役者を選んだ人間の務めだと思います.

今回の大河に出てくる信長は,出始めのいわゆる「うつけ」をすでに通り過ぎた時代だったので,
かつての信長像や先入観に縛られずにすんだともいえましょう.

怪我の功名というべきかな

・twinkle
大河「功名が辻」のコメントが楽しいです!

Comments

  1. ゆうな says:

    TBありがとうございました☆
    「功名が辻」のレビュー楽しんでいただいてかなりうれしいです(*^_^*)
    信長が大好きなので信長の時代が終わってしまうと、ちょっとレビューも手抜きになってしまってますが(~_~;)もし、よろしければ、また来てくださいね。
    今、ちょうど時代劇専門チャンネルで「剣客商売」の放送をしてまして、母が池波先生大好きなので、録画しています。鬼平や剣客は見だすと面白いので見てしまいますが、小説はまだ手をつけたことがないです。
    ではでは☆彡

  2. gauche says:

    丁寧なお便り,ありがとうございます!
    司馬さんも同原作の中で,信長のことは天才と書いていますが,今の大河も本能寺が終わった今,
    ゆうなさん同様,小生もテンションが落ち気味です.(笑)

    ちょこちょこ遊びに行ってますので,今後ともよろしくお願いします!!

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