つい先週末，学生時代の友人たちを小生の15屋に呼んでBBQをしました！
年甲斐もなくという企画でしたが，「猛烈に暑くなる前に」という年齢を考えた時季選択であったことを記しておきましょう…．
朝から小雨がパラつきましたが，撮影向きの「晴れ男」本領発揮！ 何とか肉林中は降らずに済みました．

さて，多くの人が「焼肉」という言葉の響きに心躍ります．

このことに共感する人も少なくないはず！ 実際この日も興奮しつつ,箸を操っていました．
そして小生の記憶にこれに類する魅惑を感じるものがあります．

「焚き火」です．

前者のジューっという音と後者のパチパチいう音… この二つの音には，動と静の違いこそあれ，
人の心を動かす何かがあるのでは…． つまりその音に,心躍る原因があるのではないでしょうか．

その昔，小生の無二の親友に焚き火を人生の仕事とし，よくいっしょに野営をした者がいて，
ふと最近思いついたことがあります． 小生やその焚き火男の先祖や前世に狩猟の民だった時代があるのではということ．
これは考えるほどに現実味を帯び，錯覚してしまいます． その男はバイクで，そして小生はレンズで，
狩りに似た感覚でそれらと接する…． 日本には農耕の歴史と同時に狩猟の歴史もあります．
小生や焚き火男は狩猟の民の末裔か？

これほどの錯覚を起こす「音」という存在は「映像」の世界から見ると脅威．

どんな視覚的表現を駆使しても,それに「音」の表現が加わると人はそちらの印象に引っ張られてしまいます．
サウンドトラックが,いかに大切で繊細な作業が要求されるかが,お分かり頂けるでしょう．
かつてある著名な映画監督が良い監督の条件として「耳がいいこと」を挙げていました． 同感です．

居酒屋で一杯やっていると,厨房の方からいい匂いがしてきた． 食欲を刺激される．
するとジューという音ともに隣の席に鉄板の上で美味しそうに焼けている何かが運ばれてくる．
あなたは店員さんを呼びとめ,あれは何だと手元の写真入りメニューを見ながら教えてもらい,
じゃあそれをとオーダーする．
にんまりだ… これが表現の序列だと小生は考えています．

まず嗅覚にきて,次に聴覚,視覚,触覚,そして味覚．

味覚は最後ですが,それはそれで最後ゆえに印象に残ります． つまり視覚というのは曖昧な位置にあり,
また影響力の難しいジャンルなのです． しかも同じ視覚で,文字と映像を比較するとまたまた一悶着です．
先ほど美味しそうに焼けている何かという表現をしましたが,これを読んだ瞬間に100人いれば100通りの美味しい何かが
頭の中で映像化されています． 映像表現はこれを１枚の絵にしなければなりません．
原作のある作品の映画化成功が難しいのはこれゆえともいえるでしょう．

それぞれの表現方法に難しさのあることは言わずもがなですが,その上で視覚効果の映像というのは
表現のインパクトの序列が低く,ゆえに総合芸術として他の力を借りて,且つ他のそれと拮抗する
映像を作りださねばならないのです．決して安易な方法ではない…．

その昔,先の焚き火の彼と焚き火を前にして,肴にそんな話をしたことを思い出しました．
今回BBQに彼は来れませんでしたが,炭を扱う時にはいつも傍らにいる気がします．

そして,「着火剤を使うとは軟弱な」とキツイ一言を涼しげな顔でうそぶき, 実に美味そーに煙草をくゆらす姿が目に浮かびます．